認知症よもやま話

認知症よもやま話

こんにちは、あいせい紀年病院老年科部長服部です。
前回のこのコーナーでは、認知症とはどのような状態かについて、解説しました。今回は、認知症で認められるさまざまな状態について、どのように整理されているのかについて解説します。

その2認知症の症状

認知症の症状はさまざまだが、大きく2つに分けられる。中核症状とBPSD

前回、認知症は単独の「疾患」ではなく、様々な原因が引き起こす病的な状態(症候群)であると、お話ししました。症候群は複数の症状(風邪でいうと、喉のいたみとか鼻水ですね)から成り立っています。認知症もそうなのですが、症状がとても多いのです。大きく分けて中核症状と行動・心理症状(BPSD)にわけられます。中核症状には、認知症の代名詞でもある、もの忘れ(記憶障害)、時間や場所の感覚が曖昧になる失見当識、複雑な作業を段取りよくできなくなる実行機能障害などがあります。BPSDの中には、なくしたものを盗られたと思い込むもの盗られ妄想、昼うとうとして夜眠れない昼夜逆転、やる気がなくなる意欲低下、些細なことで怒ったり泣いたりする気分不安定などがあります。

認知症の中核症状と行動・理症状(BPSD)

 

中核症状の成り立ちについて

中核症状は、アルツハイマー型認知症などの認知症の原因疾患によって、神経細胞が障害、脱落したことにともなう能力の喪失です。程度の差はあれすべての患者さんにみられ、残念ながら疾患の進行とともに悪化するものです。神経細胞が減少した部位の機能が減弱、消失することで生じます。海馬は最近の記憶をとどめておく機能がありますが、アルツハイマー型認知症では海馬の神経細胞脱落が著しくなり、そのために最近の記憶が消失していきます。中核症状は、さまざまな症状がありますが、原因となる疾患によって特徴があります。アルツハイマー型認知症では初期から記憶障害と失見当識が目立つ例が多く、前頭側頭型認知症では言葉の障害(失語)が初期から出現することが多く認められます。

 

BPSDの成り立ちについて

BPSDは、認知症のすべての人に出現するわけではなく、みられない方もいらっしゃいます。大規模調査の結果では、大体6割程度の方にBPSDが認められています。ただし、調査時点でBPSDを認めなかった方も、長期に追跡するとどこかの時点で何らかのBPSDを発症しているとされます。原因となる疾患の重症度(進行)とは、必ずしも一致せず、うつ、もの盗られ妄想は認知機能低下が目立たない時期から出現しやすい傾向があります。一方、徘徊や昼夜逆転、興奮などは、認知機能がかなりの程度低下してから、出現する傾向があります。
BPSDは中核症状による機能の脱落を基盤にして、周囲の環境との相互作用の中で生じる事が多いものです。中核症状によって、これまでできていた事柄が次第にできなくなったり、自分の気持ちをうまく伝えられなくなると、周りから孤立した気持ちになり、次第に不安が強くなっていきます。そんな中で、家族や介護者から指摘されたことが強く感じられて、混乱し、さまざまなBPSDを生じる元になっていきます。
勿論、周囲との関連のみで生じるBPSDのみではありません。たとえば、食べられないものを口にする異食や性的な脱抑制などは、脳の局所的機能障害と関連が大きく、中核症状が進んだ中で出現します。

認知症の経過(心理社会的特徴)”からくり”

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